続・そすいのさんぽみち

~2015年4月1日 1件 追加投稿しました。累計510件~
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B-08-14 車石・車道関連調査‐2(牛の削蹄師、牛関連調査)

         琵琶湖疏水の散歩道・第481話(2012-03-26)   KANKANBOW

 

1)まえがき

 大津市歴史博物館の玄関を入ると、正面に車石・車道研究会の真田孝男氏が作成した牛車模型が展示(企画展の期間)されている。真田さんは、牛を飼って農耕実務をされた経験があるので、牛の表情や姿がすばらしく、今回の企画展の目玉となる展示品となった。

  B-08-14-1_convert_20120329012021.jpg B-08-14-2_convert_20120329012405.jpg

      展示前の実物の近接写真            大津歴史博物館の正面に展示

 

 また、研究会の八木平蔵氏が入手された「牛の草鞋」の展示(寄贈者・大津市の岡本源七氏)にも見学者の興味が集中した。八木氏からいただいた資料の中にも「牛の爪切り」の記事があったが、最近のNHK・Eテレで、「牛の爪切り」を専門とする職業の紹介があった。そして、全国に約1000名の牛削蹄師の資格を持つ人が活躍していることを知った。また牛の爪を削る作業を映像で見せていただき、真田さんの家族が牛の爪を削っていたという話しを実感することができた。

 この話題は車石を曳いた牛とは無関係であるが、私自身、小中学校時代に往来を歩く牛の姿を見ていたので興味があり、少し調べてみた結果をまとめたのが本報である。

 

2)蹄の管理と道具

 岩手県奥州市前沢区に「牛の博物館」が存在する。日本唯一の牛博物館と言われているが、年に2回機関誌が発行されており、第1号(19994月)から第38号(20122月)まですべてネットで読むことができる。地域の牛にまつわる話題や世界の牛に関する歴史など牛に関する情報が詰まっているので一気に読ませていただいた。

 また、報告書として「牛博たんけん-蹄の管理と道具」があるので、その一部を紹介すると、“牛の蹄は1ヶ月に6mm程度伸びる。放牧や運動が十分であると自然に削れて正常な形を維持されるが、畜舎で飼われている場合、削蹄を定期的(年に2回が標準)に実施しないと、足の病気が発生し易くなり、搾乳量も低下し、乳房炎の発生誘因にもなる。日本では削蹄の専門家に頼んで、蹄の周囲を削蹄鉈(なた)と鎚(つち)で形を整え、つぎに蹄の裏側を鎌形蹄刀で削る。牛博では日本、台湾、アメリカ、イタリ―の削蹄用具を集めて比較展示している。

 

3)日本社団法人「日本削蹄師会」の紹介

 削蹄師の資格を取得するには「日本削蹄師会」の認定を受ける必要がある。資格は3段階あり、まず2級試験に合格し、4年経過すると1級受験資格がえられ、そのあと9年経過すると指導級の受験資格が得られる。あまり正確に把握していないので、間違った解釈をしているかも知れないが、簡単に取れない資格のようである。現在の牛飼育の主分野は、農耕でなく搾乳と食肉の生産であり、削蹄師は農家と契約して、定期的に巡回しているようである。車石車道の時代には無かった資格制度であるが、農耕中心の時代には農家自身でやっていた作業と想像される。

 

4)牛博物館の機関誌の一部題目の紹介

 機関誌の内容は、豊富な資料・写真・絵画をベースに立派な内容で、ネットで全体をみていただきたいが、ここでは私が興味を持った記事の題目の紹介のみを示した。特集号を含めて内容すべてがネットで読めるようになっている。

01号(1999-04-27)第7回企画展・トラジャの布(日下部啓子コレクション)

03号(2000-01-29)第8回企画展・バターのふるさと

05号(2000-06-17)ミニ企画展(中国の大自然と遊牧)

06号(2001-07-27)第12回企画展(クローン牛・・・性と生命を考える

07号( 特集  )家族で楽しむ企画展2002「ウマ・馬・午」・・・(馬の歴史の詳細な報告あり

09号( 特集  )家族で楽しむ企画展2003「羊は牛ですか?」(・・・羊の歴史の詳細な報告あり

11号(2003-07-23)第14回企画展「ミルクの夜明け」(世界・日本の乳文化の伝来に関する詳細報告

13号(2004-07-22)第15回企画展「浮世絵にみる牛」

14号(2005-07-2910周年記念特別展「前沢牛の歩みとそれを作ったタネ牛たち

15号(2006-12-08)家族で楽しむ企画展2007ブタと牛の遺伝子的比較

16号(2001-03-30)和牛改良の黎明(明治期発行の冊子、種牛図譜の紹介

18号(2002-03-30)世界の牛農耕(西アジアの発祥の地の解説資料

22号(2004-03-30)前沢市で発見された厩猿(牛馬の守り神の紹介)

23号(2004-10-30)国際動物遺伝学会において特別展示の実施

24号(2005-03-30)販売指定店の看板は語る(BSE騒動と関連して)

25号(2005-10-30)開館10周年を迎えて

28号(2007-03-30)家畜化モデルに関する学際研究の重要性(牛の家畜化の歴史を解説

31号(2008-07-10)前沢牛を受け継ぐ家畜文化(前沢牛が日本一最優秀賞を受賞)

34号(2010-02-22)木材を運ぶ牛と牛方(雄牛の背に800kgの木材を乗せて山道を降りる写真と解説)

35号(2010-03-30)東北ブランド牛シンポジウム(牛飼い女性たちが語る・・・特集号)

38号(2012-02-20)「ぶつかり合う角と角」(久慈市山形町で毎年開催される闘牛会)

 

4)最近の牛にかんする統計情報(全国肉用牛振興協会資料)

1)全国の牛の1戸別飼育頭数の推移

 

   

飼育戸数

飼育頭数

1戸あたりの頭数

1967(昭和42年)

1,666,000

1,551,000

  1.5

1970(昭和45年)

901,000

1,789000 

  2.0

1975(昭和50年)

 473,600

 1,857,000

  3.9

1980(昭和55年)

 364,000

2,157,000

  5.9

1985(昭和60年)

 298,000

 2,587,000

  8.7

1990(平成02年)

 232,200

 2,702,000

  11.6

1995(平成07年)

 169,700

 2,965,000

17.5

2000(平成12年)

 116,500

 2823,000

24.2

2005(平成17年)

 89,600

2,747,000

30.7

2010(平成22年)

77,400

 2,892,000

38.9

2)肉用牛の地域別飼育戸数の推移

 

北海道

東北

北陸

関東

東海

近畿

中国

四国

九州沖縄

S62年

4990    

80500

2860

20700

5040

6820

28400

7910

113180

H05年 

4730

62300

1730

12300

3650

6530

18800

4410

84670

H10年

3760

40600

990

8190

2700

4690

10000

2470

56890

H15年

3420

28300

720

6060

2060

3190

6410

1570

46740

H20年

3000

22600

579

4900

1710

2470

4870

1190

39140

 

 上表からわかるように、牛を飼う農家数は機械農耕機の発達と転業のために漸減し、残存農家も飼育規模を拡大してコスト削減と安い輸入品との競争に苦しんでいる様子が伺える。今回の調査は車牛とは関係の少ない方向に進んでしまったが、まったく牛の情報を知らなかった私にとっては興味深いものがあったので、追記させていただいた。。

 複数の馬の博物館も存在するので、今後TTPの動向や運搬手段としての牛馬の遺伝子的比較や歴史的比較を調べてみたいと思っている。今回の調査で、珍しい馬の草鞋の写真や牛の蹄鉄の話題も見付けており、ネット調査の威力を実感したことを付記する。

 

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B-08-13 車石・車道関連調査―1(花崗岩の物性面からの考察)

       琵琶湖疏水の散歩道・第480話(2012-03-21) KANKAMBOW

 

1)まえがき

大津歴史博物館において、企画展「くるま石―江戸時代街道整備」が開催(33日~4月15日)されている。主催組織の一つである「車石・車道研究会」に参加している関係で、スタート時に見学者のボランティアガイドを務めたが、見学者の興味は車石の溝が自然発生したという説明に集中した。

 単純に考えて、花崗岩という石の上を木製の車輪が通過した場合、石が擦り減る前に摩耗に弱そうな木製車輪が擦り減ってしまうのではないかという疑問である。会場に各地で産出される花崗岩の見本と産地マップが展示されているので、数人の見学者から質問されたが納得させるだけの説明ができなかった。そこで、花崗岩の方にも物性面から弱点があるのではないかと思って検討したのが本報である。専門外の考察なので自信はないが、間違った記述や問題点があれば教えてほしい。

 

2)花崗岩の物性

 花崗岩とは火成岩の一種であり、主要構成鉱物は、石英・アルカリ長石・斜長石・黒雲母・白雲母・角閃石などであり、数mmの結晶が寄り集まる粗い粒子構造を持った鉱石である。ウイキペディア資料が示す代表的化学組成は、シリカ76.83%、アルミナ12.47%で地球上に存在する代表的な岩石である。天然石材として御影石とも呼ばれ、緻密で堅く、耐摩耗性・耐久性面からも優れており、石の鳥居、城の石垣、石橋に用いられ、近代の建築物の例として国会議事堂の外装はすべて国産花崗岩でできている。また京都では鴨川に架かる橋桁の石柱や琵琶湖疏水の構造材や市内電車の敷石として広く使用され、車石用の石材として使用された。

 欠点は耐熱性で、500℃を超えると急激に強度が下がり、割れ目が発生することであるが実用面での問題はなく、最近では地域環境面や生産コスト面から大部分が輸入品として大量に使用されている。もう一つ気になる事項として風化性の問題がある。琵琶湖疏水の鴨東運河に堆積する白川砂は、背景の大文字山系の花崗岩が風化して生成されている。

その原因として、構成する各種鉱石の熱膨張率が異なるため、温度差の大きいところでは粒子間の結合が弱まり、表面がバラバラに崩れ易くなる。花崗岩の主要成分である石英(砂)は非常に風化され難く、白砂として河川に運ばれる。瀬戸内海の白砂青松や山陰の砂丘も中国山地の花崗岩が元になっている。

したがって、通常の気象条件での使用であれば、建材として使用にまったく問題はないが、車石のような過酷な使用条件のときに部分的な風化類似の現象が発生し、石の溝が出来易くなったと考えることができないか?・・・について考察してみた。

                B-08-13-1

3)花崗岩の細部情報

 花崗岩に関する検索または入手関連情報を順序不同に列記すると、

    花崗岩に含まれるアルカリ属成分(ナトリウム、カリウム、リチウムなど)やアルカリ土類属成分(カルシウム、マグネシウムなど)はケイ酸塩の形で存在し、風化(加水分解性など)を受けやすい成分を含むと推定される。

たとえば、花崗岩の構成成分の一つである「雲母」はカリウムを主成分とするケイ酸塩鉱物であり、斜長石はナトリウムとカルシウムを主成分とする長石類の総称である。

    花崗岩を分析すると、その組成は産出地によって微妙に変化する。外見上の色彩も白色系・淡桃色系・淡緑色系・黒色系と変化し、黒雲母の斑点模様にも地域的特徴がある。

少量の鉄分を含むため、酸化すると錆(酸化鉄)を発生する。

    地球地殻の元素の存在比は、多い順から酸素が約50%、ケイ素が約25%、カルシウムが約3.4%、ナトリウムが約2.63%、カリウムが約2.4%、マグネシウムが約1.9%であり、花崗岩の主要成分の多い順とほぼ一致する。

    太陽系の地球以外の岩石天体に花崗岩は見出されていない。花崗岩の形成に水の関与が必要で、海の存在する地球でのみ大量に作られてきたと推定されている。

    石材は硬いほど長持ちするが、加工技術が未発達の頃は硬い花崗岩のような硬い岩石は利用されず、大理石・砂岩・蛇紋岩などの柔らかい岩石の利用が普及していた。

    花崗岩はマグマがゆっくり固まってできた火成岩で、マグマが地殻に入り込もことを「貫入」といい、貫入によって周囲の岩石が熱によって変成を受ける。

    日本の花崗岩は、塊状で産出され埋蔵量も少なく、品質にもムラが多く、環境保護のため生産制限があるので、現在は輸入品が主体となっている。石材業者のカタログには世界各地の輸入花崗岩がリストされているが、量的には中国品が主力のようである。

 

4)車石の使用条件

 東海道の大津札の辻から京都三条大橋までの距離は3里(約12km)で、米俵9表(60

kg×9=540kg)を積んだ約300kgの牛車(合計約840kg)が年間約2万輌通過して、摩耗により車石に溝ができたと研究会で想定している。

 石材の摩耗度の測定には、圧縮強度・曲げ強度・引っ張り強度・せん断強度、弾性係数、吸水率、耐熱度、熱伝動率などの値を綜合して判断されるが、自然環境に近い条件での使用を前提として測定される。この場合、各種岩石(花崗岩、安山岩、凝灰岩、砂岩、大理石など)の中で花崗岩は石材として最良の岩石と評定されている。

 

最近では鉄道の高速化が進み、軌道(レール)と車輪との摩擦現象に関する研究報告も増えてきたが、車石に関する研究も進んできたので、溝の発生についても減耗速度面からの数値的な裏付けが欲しい。急ぐ必要はないが、研究助成金による研究機関の協力を考え

                  B-08-13-2

てもよい時期にきたと考える。研究機関も、技術系よりは地域の歴史に興味を持つ大学を選び、耐摩耗性の測定実務は試験受託機関を利用する方法がよい。

たとえば、資材の耐摩耗性試験を受託する機関として、「エイキットKK評価試験事業部」があり、耐摩耗試験として①すべり摩耗試験、②静・動摩擦係数、③テーパー摩耗試験

などを挙げている。車石の過酷な使用条件下における物性値を測定し、「使用時に溝が発生」説の理論武装をしてほしいと考える。

 

添付資料:主要岩石の種類と特徴

 

成因別分類

        特   徴

代表的な岩石

火成岩

 

地球内部のマグマ(岸礁)が冷却する過程で凝固したもの。結晶質または半結晶質で塊状をなしている。深成岩・火山岩・半深成岩に分類される。

花崗岩、玄武岩、安山岩、閃緑岩(黒御影)

水成岩

 

岩石が風化浸食されたものや、水に溶解した鉱物質・動植物の遺骸・火山の噴出物などなどが、層をなして積り固まったもので、堆積岩とも呼称される。

凝灰岩(大谷石)、石灰岩、砂岩

変成岩

 

火成岩や水成岩が天然の圧力や熱によって変質したもの

大理石、蛇紋岩、片岩

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

               B-08-13-3(完)

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